傷害慰謝料の算定基準
傷害慰謝料の算定基準
交通事故により被った精神的苦痛の内,症状固定までの部分に対しては,「傷害慰謝料」という形で損害賠償がなされることになります(症状固定以降の精神的苦痛は,「後遺障害慰謝料」という形で賠償されます。)。
傷害慰謝料の算定基準には,「自賠責基準」,「任意保険会社基準」,「裁判基準」の3種類があります。
なお,裁判基準は「弁護士基準」と呼ばれることもあります。
自賠責基準
自賠責基準による傷害慰謝料は,「4200円×実際に入通院した日数×2」で計算される額と,「4200円×入通院期間」で計算される額のどちらか低い方となります。
また,自賠責基準においては,過失相殺により傷害慰謝料額が減らされるのは,被害者の方の過失が7割以上ある場合に限られるという特徴があります。
【傷害慰謝料の具体例】
交通事故によりむちうち症となり,4か月の通院(実際に通院した日数は50日)が必要となった場合。
計算式①:4200円×50日(実際に通院した日数)×2=42万円
計算式②:4200円×120日(通院4か月)=50万4000円
計算式①の傷害慰謝料額の方が低いため,自賠責基準による傷害慰謝料額は,42万円となります。
任意保険会社基準
任意保険会社基準とは,各任意保険会社において採用されている慰謝料の基準のことです。
任意保険会社基準は,任意保険会社ごとにその内容が異なりますので,同じような事故に遭った場合でも,加害者が加入している任意保険会社が異なれば,傷害慰謝料の額も異なる場合があります。
なお,任意保険会社基準は,次にご紹介する裁判基準よりも低い基準となっていることが多いです。
裁判基準
裁判基準とは,裁判所が用いている傷害慰謝料の基準のことを言います。
弁護士が示談交渉を行う場合も,裁判基準を用いる場合が多いですので,「弁護士基準」と呼ばれることもあります。
傷害慰謝料に関する裁判基準については,下記の書籍に表の形で掲載されています。
①日弁連交通事故相談センター東京支部発行
「損害賠償額算定基準上巻(基準編)」
この書籍は一般的に「赤本」と呼ばれます。
赤本には,他覚所見のある重傷案件に適用される別表Ⅰという基準表と,他覚所見のない軽症案件に適用される別表Ⅱという基準表が掲載されています。
②日弁連交通事故相談センター発行
「交通事故損害賠償額算定基準―実務運用と解説―」
この書籍は一般的に「青本」と呼ばれます。
もっとも,これらの書籍に掲載されている基準が絶対的なものというものではございませんので,これらの書籍の基準を参照しつつ,個別事案に応じて,傷害慰謝料が増減されることもあり得ます。
【傷害慰謝料の具体例】
交通事故により他覚所見のないむちうち症となり,4か月の通院(実際に通院した日数は50日)が必要となった場合。
赤本別表Ⅱを参照すると,通院が4か月の場合で実通院日数が50日の場合の傷害慰謝料額は67万円となります。